受賞作 | : | 「消えた琉球競馬」 |
受賞者 | : | 梅崎 晴光氏 |
梅崎 晴光(うめざき はるみつ)氏 1962年東京都出身。早稲田大学を卒業し、スポーツニッポン新聞社に入社。1988年同社レース部、競馬担当となる。 |
<受賞作の概要>
琉球競馬「ンマハラシー」の歴史と実態を、克明に再現し貴重な記録とした実話。琉球文化に関心を持つ著者が、速さを競うのではなく、足並みの美しさを競った琉球競馬で頂点に君臨した名馬「ヒコーキ」の蹄跡を求めて、沖縄各地の馬場跡を歩く等琉球競馬の歴史を明らかにしようとする渾身の作品。
<受賞理由>
宮古馬を中心とした沖縄在来馬が、見事な模様の施された胴着と袴を身につけた騎手を背に、2頭ずつ200メートル程の走路を側対歩という特殊な歩法で駆け抜けて、もっぱらスピードではなく、動きの優雅さを競うという他に例をみない琉球競馬において、無類の実力を誇った名馬「ヒコーキ」の足跡を追うなかで、琉球競馬の歴史が明らかになっていく、可能な限り克明に再現した貴重な記録であるという点が評価された。
<受賞者のコメント>
「琉球王朝の時代から沖縄戦の直前まで、およそ400年にわたって連綿と受け継がれてきた琉球競馬。速さでも強さでもなく、美しさを競った世界に類のない競走スタイルは、美の価値をことさら重んじる琉球の精神性が生み出したものだと考えています。琉歌、舞踊から染織、金工、漆芸、陶芸、建築にいたるまで比類なき美を発展させた琉球の馬事文化です。だからこそ、艱難辛苦の歴史の波に翻弄されながらもウチナーンチュ(沖縄の人々)を熱狂させてきたのでしょう。身に余る賞を賜ることができたのは、一競馬記者の力でもなければ、運の強さからでもありません。琉球文化の力が引き出した幸運です。
調査、取材の過程では、たくさんの不思議な出合いがありました。しかも、この本の発行とほぼ同時期に、琉球競馬が70年ぶりに復活したのです。偶然にしては出来すぎです。歴史に埋もれていた琉球文化の磁力のようなものが働いているのではないか。そんな思いさえ抱いております。
『癒しの島』として年間600万人前後の日本人観光客が訪れる沖縄県ですが、日本に癒されたことがほとんどありません。癒しの一方通行。琉球競馬は『ンマハラシー』(沖縄言葉で競馬の意味)の名で今年3月2日にも沖縄こどもの国(沖縄市)で開催される予定です。ぜひ、ご覧いただきたいと願っています。
皆様のお力添えを賜れば、馬事文化で沖縄に少しだけ恩返しができます。」
(参考) JRA賞馬事文化賞は、当該年度において文学、評論、美術、映画、音楽、写真、公演等を通じ馬事文化の発展に特に顕著な功績のあった者に授与します。 |
◇2013年度 JRA賞馬事文化賞 選考委員(五十音順)
小長谷 有紀 氏 | (国立民族学博物館 教授) |
酒井 忠康 氏 | (世田谷美術館 館長) |
末崎 真澄 氏 | (馬事文化財団 理事) |
永井 梓 氏 | (読売新聞 論説委員会 特別顧問) |
畑山 光伸 氏 | (馬事文化財団 理事長) |
本村 凌二 氏 | (東京大学 名誉教授) |
柳瀬 尚紀 氏 | (英文学者) |
山本 容子 氏 | (銅版画家) |
◇選考委員会での経過